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一人親方のインボイス|2割特例は2026年分で最後、次は3割特例

公開:2026年8月29日

インボイス制度の登録をしたあと、消費税の納付額を「売上税額の2割」で済ませられる2割特例を使っている一人親方は多いと思います。この特例には終わりがあり、個人事業者の場合は令和8年(2026年)分が最後です。

そして令和8年度の税制改正で、その後継にあたる3割特例が創設されました。名前は似ていますが、対象者も割合も違います。この記事では、その2つの違いと、いつ何が切り替わるのかを整理します。

先に前提として

ここで扱うのは消費税の納付額の計算方法の話です。見積書や請求書の書き方が変わるわけではありません。登録番号を書く、税率ごとに区分する、といった適格請求書の記載事項は今までどおりです。

また、この記事は制度の全体像を整理したものです。自分がどの特例を使えるか、使ったほうが得かは、売上や仕入の状況によって変わります。個別の判断は所轄の税務署か税理士に確認してください。

2割特例とは何だったか

免税事業者だった人が、インボイス発行事業者の登録を受けたことで課税事業者になった場合に、納付する消費税を「売上にかかる消費税額の2割」にできるという措置です。仕入や経費の消費税をいちいち集計しなくても計算できるため、経理の負担も軽くなります。

使うために事前の届出は要りません。消費税の確定申告書に、2割特例の適用を受ける旨を付記すれば適用されます。申告のたびに使う・使わないを選べるのが特徴です。

いつまで使えるのか

国税庁の説明では、2割特例が使えるのは令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間とされています。

個人事業者の課税期間は1月1日から12月31日までの暦年です。令和8年9月30日はこの期間の中に入るので、令和8年分(2026年分。申告は2027年3月末まで)が2割特例を使える最後の年ということになります。

法人の場合は事業年度によって終わる時期が変わります。令和8年9月30日を含む事業年度が最後です。

令和9年分からは3割特例

令和8年度税制改正で、2割特例の後継として3割特例が創設されました。国税庁の特集ページでは、次のように整理されています。

2割特例3割特例
対象個人事業者・法人個人事業者のみ(法人は対象外)
対象となる年分令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間令和9年分・令和10年分
納付税額売上税額の2割売上税額の3割
主な要件免税事業者だった人が、インボイス発行事業者の登録を受けたことで課税事業者になっていること。基準期間(適用を受ける年の2年前)の課税売上高が1,000万円以下であること

細かい要件や、特例を使えない課税期間の定めもあります(課税期間を1か月や3か月に短縮している場合など)。自分が対象かどうかは、国税庁が公開している適用可否のフローチャートで確認するか、税務署に問い合わせてください。

つまり一人親方(個人事業者)にとっては、2026年分までは2割、2027年分と2028年分は3割という流れになります。法人化している場合は、令和8年9月30日を含む事業年度で特例が終わり、その先は一般課税か簡易課税のどちらかを選ぶことになります。

負担がどれくらい変わるか

単純化した例で見ると、税抜きの売上が500万円(受け取る消費税が50万円)だとして、納付額は次のようになります。

2割特例(令和8年分まで)50万円 × 20% = 10万円
3割特例(令和9年分・10年分)50万円 × 30% = 15万円

差は年5万円です。実際の税額は取引の内容や税率区分によって変わるので、あくまで規模感として見てください。急に倍になるような変化ではありませんが、2027年分の申告から手取りが少し減ることは、いまのうちに見込んでおくと慌てずに済みます。

簡易課税とどちらが有利か

特例が終わったあとの選択肢が簡易課税です。こちらは業種ごとに決められた「みなし仕入率」を使って納付額を計算します。

建設業は原則として第三種事業でみなし仕入率70%(納付は売上税額の30%)です。ただし国税庁の説明では、第三種事業から「加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供」は除かれ、第四種事業(みなし仕入率60%、納付は売上税額の40%)になるとされています。

ここが一人親方にとって大きく効いてきます。区分は「建設業だから第三種」と業種名で決まるのではなく、事業の実態で判断されます。

第三種(70%)自分で主要な材料を調達・負担し、仕上げたものを引き渡す。工事一式の請負
第四種(60%)元請の現場に入り、支給された材料を使って施工する。技術と労働力を提供する手間請負

つまり、元請から材料を支給されて手間賃を受け取る働き方(いわゆる人工出し・手間請け)は第四種になります。内装・クロス・塗装・大工などで、この形で仕事をしている一人親方は少なくないはずです。第三種のつもりで計算していると、納付額が売上税額の30%ではなく40%になります。

注意したいのが材料の有償支給です。形のうえでは元請から材料を買い取っていても、実態が手間請負と変わらなければ第四種と判断されることがあります。また、製作と取付が一式になっている場合など、判定が割れやすい形もあります。自分がどちらに当たるかは、契約の形ではなく実際の取引の中身で決まるので、迷う場合は税務署か税理士に確認してください。

なお、3割特例(および2割特例)を使った人が簡易課税に移る場合、適用を受けようとする課税期間の申告期限までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を出せば、その課税期間から簡易課税を使えるという取扱いがあります。通常は課税期間が始まる前に出す必要がある届出なので、この点は覚えておくと選択の幅が広がります。

請求書の側でやることは変わらない

特例が2割から3割に変わっても、交付する請求書の記載事項は変わりません。適格請求書として必要なのは次の6項目です。

1書類作成者の氏名または名称および登録番号
2取引年月日
3取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
4税率ごとに区分して合計した税込対価(または税抜対価)の額および適用税率
5税率ごとに区分した消費税額等
6書類の交付を受ける事業者の氏名または名称

登録番号を入れ忘れた請求書は、渡した相手が仕入税額控除を受けられません。書式を一度整えておけば、この部分は毎回考えなくて済みます。

いま確認しておくとよいこと

請求書の書式を整えておく

「内装見積書・請求書アプリ」は、現場で見積書と請求書を作るために作ったAndroidアプリです。適格請求書の登録番号に対応しているので、一度登録すれば以降の書類にそのまま入ります。

作成件数に制限はなく、無料のまま使えます(無料版で出力したPDFには透かしが入ります)。透かしを消す、自社ロゴを入れる、見積書を請求書に変換する、といった機能はPro版(月額490円/買い切り4,900円)です。

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出典

内容の確認に用いた専門家の解説

この記事は2026年8月時点で確認した内容をまとめたものです。制度は改正される場合があります。個別の税務判断については、所轄の税務署または税理士にご確認ください。